アメリカ・ノースカロライナ州にある日本人向けの牧場「グリーンウェイランチ[GREENWAY RANCH]」ブログ

2012.April

Sun

Mon

Tue

Wed

Thu

Fri

Sat

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

Backnumber

Image Index

みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号) みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号) みどりのThat’s録・(馬旅2020年 No. 05号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 04号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 03号) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02)
みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02) みどりのThat’s録・(馬旅2019年 No. 02)
みどりのThat’s録・馬に魅せられて (馬旅2019年 創刊号01) みどりのThat’s録・馬に魅せられて (馬旅2019年 創刊号01) みどりのThat's 録 (ウィリー)
みどりのThat's 録 (ウィリー) みどりのThat's 録 (ウィリー) みどりのThat's 録 (ウィリー)
ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター) ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター) ジョイのつらつら日記(ビフォーアフターのアフター)

Apr

12

2012

春の大奮闘 B、放棄された子馬

2012年3月31日

体調の悪そうな子馬の様子を見るために、
家を飛び出し、繁殖牝馬の放牧地まで小走りで行った。

放牧地を囲う電気が流れるロープの間をくぐり抜けると、
シェッドへは深呼吸しながらゆっくり歩く。
足早に動いて馬達を興奮させたくなかったし、
はやる自分の心も静める必要があった。

シェッドまであと数メートルというところまできたとき、
その反対側からヌーッと1週間前に出産した母馬が姿を見せた。

「ダメじゃない! 子供を置き去りにして、なにしてたの・・・」
と、具合の悪い子馬に近づきながら母馬に声をかけたら、
彼女の後ろからもう1頭子馬がひょっこり姿を現した。

(えっ!!)
と思った瞬間、やっと事態が飲み込めた。

体調が悪いと思った子馬は、
昨日検診を受けた牝馬が産み落としたものだったのだ。

きっとシェッドの中で出産して、
まだ子馬が立てない内に置き去りにしたのだろう。
ずっと向こうの離れた所で草を食べている牝馬の近くに、
後産が落ちていた。

育児放棄だ!!
・・・と思った瞬間、頭の中が真っ白になった。


100_0109.jpg


(当たり前のように思っていた、母馬が子馬に授乳する光景 2008年撮影)


グリーンウエイランチを始める前にも、
他の牧場で行く度か馬の出産に立ち会う機会があったが、
母馬が自分の子馬に興味を示さない・・・、
こんな状況に出くわすのは初めてだった。

可哀想に、
子馬はシェッドの内側に張ってある木の板を母馬の体と思ったみたいだ。
おぼつかない足取りでフラフラしながら、
小さな鼻面で板をまさぐりお乳を捜している。

そこには哀れな子馬の姿があったが、
最初に懸念した病気でも、怪我でもなかった。
それを確認できただけで、気持ちは少しづつ落ち着いてきた。

ただ、この状況にどう対応して良いのか分からなかったので、
週末で申し訳ないと思いながらも、
ドンペリドンを教えてくれた牧場の娘さんに電話をした。

「産まれたの?」
彼女は、着信で私からの電話と知ったのか、挨拶する前にいきなり切り出した。
馬を扱う人は感の鋭い人が多い。

「うん、放牧地で産んだんだけど、母馬は子馬に全く無関心なのよ。」

それを伝えると、母馬が子馬をアタックしないことを前提に、
何をすべきか、彼女は指示を出してくれた。

「なるべく触らないようにして、子馬を馬房に移動しないとね。 
そこで母馬に授乳するようにしむけるの。 その時、後産を子馬になすりつけるといいわ。 
わたしも以前そんな事があって、子馬がお乳飲むまで5時間かかったわよ。」

子馬を馬房まで移動する、という話に私は困惑した。
「馬房までかなりの距離があるの。 1人で連れて行けるか・・とにかくやってみる。」
私は戸惑いながらも、そう伝えるしかなかった。

ただ彼女が言った、「5時間」 という言葉に少し救われた。 
以前、獣医さんからは、産まれて3時間以内に乳を飲ませる必要があると
聞いたのを覚えていたからだ。

どちらが正解か分からない。
きっとどちらも正しいのだろう・・・。 
ただ、現場で実際に経験した人の話は説得力があった。

「もし、ダメだったらまた電話して。 手伝いに行くから。」

娘さんのそんな言葉を最後に電話を切った後、
私は一人取り残されたような孤独感に浸った。

彼女は私がこれからやろうとしていることが、
大変なことだというのを知っていた。

私も想像しただけで、ほとんど1人では無理だと思った。
そして、こんな風に弱気になる自分を悔しく思った。
相手はたかだか生まれたての子馬ではないか。

(大丈夫、きっとできる。 大丈夫、大丈夫・・・。)
ダメだと思ったときに、自分に言い聞かせる魔法の言葉を何回も繰り返す。
この言葉は嘘のように効果があって、
今までも 「できない」 と思ったことを可能にした自分へのエールだ。

子馬の様子から、産まれてまだ2時間と経っていないはずだった。
まだ、たくさん時間はある。
まずは、この状況で何を最初にする必要があるのか考えを巡らした。



















2012/04/12 10:25:03 | リンク用URL

Apr

08

2012

春の大奮闘 A、バトルのプロローグ

(2012年3月)

3月31日の朝は、前夜から雨が降ったり止んだりの天気が続いていた。
ちょうど馬に飼い付けをする時間に雨足が強くなったので、
家で1時間ほど様子を見ることにする。
天気図では、その頃には雨雲がいったん切れる模様だった。

朝は起きるとカーテンを開けながら、台所に行くのが習慣となっている。
台所のシンクに立つと、そこの窓からバーンを含め、
放牧地のほとんどが見渡せるようになっているので、
やかんに水を入れながら、外にいる馬達の様子をチェックする。

DSC00912.jpg


(窓から見える景色)


昨日、妊娠検査をした馬はもう1頭の妊娠馬と並んで青草を食べていた。
いつもと変わった様子は見られない。
(ほらね、やっぱり子馬は産まれてない。来週から産室に移動すれば充分間に合いそう・・・)
と思う。

グリーンウエイランチの馬達の基礎を作ってくれてる、
ガナーズモールという名前の繁殖牝馬は、
予定日より2週間早く出産した年があった。

朝、台所から外をのぞいたときに、
いるはずのない子馬がちょこんと彼女に寄り添っていて、
ドッカ〜ンと度肝を抜かれるような経験をしたことがある。

予想だにしない、見たことのない馬が1頭増えていて、
一瞬、夢かと思ったほどの衝撃を受けた。
その日はよりによって4月1日のエープリルフール、
2007年の春だった。

バーンには研修生と一緒に立派な産室を作ったのに、
グリーンウエイランチをオープンして初の馬の出産がこんな始末だ。

自分の読みの甘さを反省しながら、
この冗談のような話を記念に、
子馬の登録名に April という一文字を入れた。

後にその経験がちょっとしたトラウマになってしまい、繁殖牝馬の臨月には、
(まだ生まれてない)という期待?と(放牧地で産んでしまったという)
不安の入り混じった複雑な気持ちで、朝一番の外の景色を見ることになる。

このところ、出産や種付けでドタバタと気忙しくしていたので、
この日の朝は、ちょっとした時間の余裕を嬉しく思い、
ゆっくりニュースを見ながら朝食をすませた。
食器をシンクへ持っていきがてら、また放牧地の様子を見る。

青草を食べている2頭は以前と同じだった。
ところが、シェッド(出入り自由な小屋)でなにか様子がおかしい。

DSC00851.jpg


(シェッド、中央に壁があり両側から出入りできるようになっている。)


雨が降ると、先に出産した繁殖牝馬は子馬を連れてシェッドで雨宿りをするが、
今朝はどこに行ったのやら、子馬を1頭で置き去りにしている。

母馬は子馬が生後一ヶ月くらいになると、
多少自分から離れた所へ居ても視界に入っていれば心配しなくなるが、
生後2週間と経っていない時期に、親子が一緒でないのは変だった。

頭の中にいくつもの疑問が浮かび、
なにが起こっているのか分からず、胸騒ぎがした。

目をじっと凝らしてシェッドの中の子馬を見ていると、
昨日の様子とは違い動き方が変である。
体調が悪い感じで、頭を下げてヨタヨタと歩いている。

(大変だ! 具合が悪いんだ!)

この子馬は産まれて2日目から下痢をして、
3日間治療を受けたことがある。

DSC00840.jpg


(お腹をこわしてしまった子馬。 お尻の周りが黄色く汚れています。)


その間も元気で、下痢も軟便程度のものだったが、
子馬の下痢は急速に体力が弱るので軽視できない。
それに下痢による脱水症状は命取りにもなる。

完治したと思ったが、それに関係した体調不良なのか・・・、
それとも怪我でもしたのだろうか。

外はまだ雨が降っていた。
私は、大急ぎでウインドブレーカーに長靴とキャップを身につけ表へ出た。
















2012/04/08 0:45:19 | リンク用URL

Apr

04

2012

春の大奮闘 @、おっぱい騒動

2012年3月

今年もありがたくやって来てくれた春。
私にとって1年の中でこの時期は、色んな意味で気分が高揚する。

小規模ながらも繁殖を手がけてるグリーンウエイランチは、
オープン以来一番忙しい春を迎えた。

タイミングとは不思議なもので、
なぜか今までで一番出産の頭数が多い今年に限って、
私は1人で牧場の仕事を切り盛りしていた。

周りで見ている皆さんはさぞかし大変だろうと、同情してくださりとてもありがたい。
・・・が、大変ながら本人この状況を結構エンジョイしているのだ。
・・・というか、1人で色々とこなしている内に、エンジョイ以上の感動を覚えるまでに至った。

ポカポカと暖かい日が増えてきて、冬も終わろうとしている頃は、
(3頭のお産、1人では心細いなぁ・・・、無事に生まれてくれればいいけど・・・)
とお腹が大きくなってくる放牧地の牝馬を見ながら思っていた。

DSC01273.jpg


だが、手伝いの人がいてもいなくても牧場のことを決断していくのは自分だけ。
そして、人の数に関わりなく何かが起こるときは起こるのである。
そんな現実が突如、身に降りかかってきたのが3月31日の出来事だった。


3月2日が出産予定日だった初産の繁殖牝馬がいる。
この馬、予定日を半月過ぎても全然おっぱいが張ってこなかった。

たいがい出産の3〜4週間前くらいから、ふっくらしてくるものだが、
餌をあげる度に、後ろ足の付け根に2つあるおっぱいをチェックしても
期待に反して何時もそこはペッチャンコ。
それを見て、お産はまだまだ先のことだと思った。

繁殖の経験が豊富な牧場の娘さんにその事を話してみたら、
「今の段階でおっぱいが張ってこなかったら、子馬が生まれたとき大変よ。
人の手でミルクをあげなくちゃならなくなる。 ものすごい労働だから・・・」

馬の出産が遅れる話はよく耳にしたことがあるので、あまり心配はしていなかったが、
空のおっぱいで子馬が生まれることもある、という話しに大慌てをしてしまった。
動物界でもそんな事があるのだ・・・、。

私は獣医さんまですっ飛んでいき、
彼女のすすめる母乳を作る促進剤のような薬を買い、
すぐさまその日から与え始めた。

それは「ドンペリドン」というお酒の様な名前で、
大きな注射器の入れ物にゼリー状の薬が入っている。
目盛りがついていて、毎日5ccを馬の口に押し込んでいくタイプのものである。

1本は5日分あり、それを与え始めて3日も経つと、
少しずつおっぱいがふっくらとしてきたのにはビックリした。
効果がなくては困るのだが、 「薬とはすごい!」 とあらためて思う。
そう言う本人は自然流が好きなのでアンチ薬派なのだが・・・。

ここは背に腹は代えられないので、バランス良く考えることにした。
人手のないところにきて、もし子馬をミルクで育てるはめになったら
何か月とかかる人工哺乳で私の体力は持たないだろう。

そしてなによりも子馬には、お母さんが与える母乳がすごく大切である。
とくに出産直後の初乳は栄養が豊富で、
病気に対する抵抗力をつけてくれるので子馬には欠かせない。

獣医書には、初乳が出過ぎて子馬が飲む前にしたたり落ちているときは、
ほ乳瓶にためて与えるようにと書いてあるほどだ。

DSC00828.jpg


(生まれたての子馬、お母さんから愛情たっぷりの初乳をもらってます。)


ドンペリドンの1本目が終わってもまだおっぱいの張り方が足りないので、
また獣医さんまで足を運び2本目を与え始めた頃、今度は変な不安にかられた。
予定日を過ぎて3週間以上経っているのに、牝馬のお腹はそれほど大きく見えない。

(お腹の子は生きているのだろうか・・・。)
そう疑問に思い始めると寝ても覚めてもその事が頭から離れず、
他の繁殖牝馬を種付けに連れて行くとき、
その妊娠馬も一緒に獣医さんに診てもらうことにした。。

細くてなが〜い腕を持つ女医さんは、
馬のお尻の穴にそのか細い腕を二の腕まで突っ込んで、
「うん、大丈夫。 今、子馬に触れたけど、なんかグルって回転したみたい。
多分、近いと思うわよ。」
と言ってくれ、ほっと安堵のため息。

その女医さんが、
「この前はね、わたしが診察した牝馬、次の日に子馬を産んだのよ。」
そばで手伝っている人に女医さんがそんな事を言ってるのを
ボーッと外の景色を眺めながら聞いていた。

その時私は、牧場へ戻ったらしなければならない事を考えている最中だった。
晩から翌日にかけて天気が崩れるので、仕事の段取りを考えていた。
その日のことをちゃんと終わらせておかないと、用事は次から次へと押してくる。

牝馬の診察を終え、牧場に戻って連れ帰った3頭をトレーラーから下ろし、
放牧地に振り分けた。
3頭のうち2頭は空のお腹で今年種付けする馬。
この馬達は一緒に小さめの放牧地へ連れて行く。

お腹の子馬が無事だと確認できた例の牝馬は、
牧場の中で一番奥にある広い放牧地へ連れて行った。
ここは自宅からもっとも近くて馬の様子が家からでもよく見える。
そこには今月下旬に出産予定の馬と10日前に出産した親子馬が放牧してある。

トレーラーから放牧地までの長い距離を引き馬しながら、
さっき聞いた獣医さんの話を思い出していた。

(この馬に限って明日生むことはないよ・・・、まだ体の準備ができてないし・・・
どう見てもまだだよね・・・)

一日千秋の思いでこの数週間を過ごしてきたので、
仔馬は永遠に生まれてこないような錯覚にも陥っていた。

心の中でブツブツと勝手な独り言をつぶやきながら、
放牧地に到着すると牝馬の首をポンポンと叩いて
「良かったねー!。 子馬は元気だってよー。」
そう話しかけながらムクチをはずし、放牧地を後にした。























2012/04/04 2:04:26 | リンク用URL

Page Top